書房一角

隨時寫些小文 / 思いついたら書く

漢口の路地裏にて

宅男呼ばわりされた。

なるほど、そう見える。

見た目は、確かにそうだ。

けれども僕は、部屋にこもっている時は何時だって心中悶々としている。

いつの間にか日が暮れて、ああ、今日もまた一日を無駄にしたと、毎度毎度一人で大いに落ち込んでいる。

できることなら僕だって、お天道様の下をのんきにふらついて暮らしたい。

しかし、生活の中から生まれる幾多の不安が僕の心を押さえつけるので、仕方がなしに、部屋に籠ってじっと耐えているのである。


きょうは幾分気分がよかった。

今週はきちんと朝に起きて、ご飯を食べ、ぬるいコーヒーを一杯すすって、ちゃあんと学校に出ている。

何事か為すことがあれば、所在のない当座の不安は解消されるのである。

それで、久しぶりに僕は街へ出た。

 

 

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長江を渡る。

 

ふらふらとバスに乗って、何の気なしに江漢路で降りた。

目的も何もない。

ただ僕はふらふらしたかった。

それで、ふらふらと歩いた。

歩いたら、いろんなものがあった。


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大通りのひとつ隣の、幾分こぢんまりとした、人間味有る街並みを、一人ゆっくりと歩いた。

何はともあれ、気分だけは良かった。 

 


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武漢国民政府旧址を見つけた。

やる気のない職員に促され、名前と所属、電話番号などを記帳し、中へ。

誰もいない。

ひっそりとしている。


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青天白日満地紅旗天下為公。中山先生。

なるほど、などと、例のわかったようなわからないような阿呆面を下げ、感心した様子で見入る。

 

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宋慶齢かわいい。

 


また外に出て、路地裏をふらつく。

途中、何やら劇をやっているのを見つけた。

京劇かと思ったが、外の看板には、どこか覇気のない手書きの文字で、「武漢市洪山區楚劇團」と書いてある。

「漢」の字が、どうにも怪しい。

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中に入ると、そこは社区の一階のさほど大きくもない部屋で、窓がなく、真昼間なのに薄暗い。

豆電球の下で、煙草の煙がゆらゆらしている。

中には舞台が拵えられているが、まあちゃちなもので、「劇團」の劇場というよりは、おまつりのときにやってくる移動式の芝居小屋のような雰囲気。

 

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舞台に立つのはみな老人。

伴奏も老人、客もみな老人。

客席のすぐ横でじゃらじゃらとやかましく麻雀に興じているのも、そろそろ老境に片足を踏み入れようかという各位である。

外の看板には「内设戏剧棋牌茶座」とあるが、劇と雀卓は上のとおり、茶座も名ばかりで、床に置いてある馬鹿でかいピンク色の魔法瓶からめいめい勝手に湯を持っていくしくみ。

茶葉は各自持参の様子である。


役者たちは老人ながらなかなか力のこもった演技を続けているが、どうもマイクが人数分用意されていないらしく、マイクの有無で聞こえてくる声量にだいぶ差が出ている。

そのうち、先にはけた役者がマイクのスイッチを切らないまま舞台裏でおしゃべりに興じだして、舞台の声は見事にかき消されてしまった。


何やら薄暗い部屋に老人が集い、観劇やら麻雀やらに興じている。

異国、異世界、非日常。

豆腐脳を食いながらしばし見入った。

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劇の終わる頃に売りに来る。一椀二元。


その後またふらふらしていたら、漢江の川辺に出た。

砂浜の上にいろいろなものが落ちている。

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もやし

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先進党小組

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夢の跡


その後おしゃれな甘味屋なんぞに行って杏仁豆腐を食べながら時間をつぶした。

居心地が良かった。

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何かもっと書こうと思っていたはずだが忘れた。